力を抜くほど長く立てるという逆説
立ち仕事を長く続けている人ほど、力を抜いたまま立っているように見えるから不思議なものです。がんばって踏ん張っている人よりも、静かに立っている人のほうが夕方まで動きが崩れないのです。
力を入れて立ってしまうと、体のどこかが固まってしまい、かえって早く疲れるといわれています。反対に力を抜いておくようにすると、必要な場面ですぐに力を出せるという余裕が残ることになります。
お菓子作りの現場は立ったままの作業が長く続くため、この違いは一日の終わりに大きく表れます。同じ時間だけ立っていたはずなのに、残っている元気の量がまるで違うということも起こってきます。
力を抜くというのは、だらしなく立つこととは違っていて、支える場所を減らすという意味に近いものです。骨で立つという言い方をする人もいて、余分な力を使わない姿勢が現場では探し続けられています。
パティシエの仕事には、細かな手つきを求められる場面と、力を必要とする場面とが混じっています。だからこそ、力を入れる場面と抜く場面を分けられるかどうかが、長く働くための静かな鍵になります。
ずっと力を入れ続けていると、いざ力が必要になった場面で出しきれないということが起こります。使いどころを絞れる人ほど、忙しい日であっても最後まで手つきが崩れないように見えるものです。
急ごうとして体に力が入ってしまうと、動きは大きくなるのに、仕事は思ったほど進んでいきません。急いでいるときこそ肩の力を抜くという逆さまの選択が、結果としては大きな近道になってくれます。
疲れは同じ姿勢を続けることからも生まれてくるため、こまめに姿勢を変えるという工夫もあります。ほんの少し向きを変えてみるだけでも、体にかかっている場所が移り、楽になることが知られています。
立ち方は癖になりやすいため、早いうちに整えておいたほうが良いという声が現場では多く聞かれます。癖がついてしまってからでは直すのに時間がかかり、その間も体は同じ使われ方を続けてしまいます。
気になることがあれば、独りで我慢せずに周りへ相談できる関係を持っておくことが大切になります。同じ現場で長く働いてきた人ほど、自分なりの工夫を持っていて快く教えてくれるものだといえます。
立ち位置と足の置き方が変える一日
足をどのくらい開いて立つのかによって、体の安定の仕方はずいぶん変わってくるといわれています。狭すぎても広すぎても揺れやすくなってしまうため、自分に合う幅を探しておくことが勧められます。
片方の足に体重をかけ続けていると偏りが生まれてくるため、時々かける側を変えている人もいます。無意識のうちに同じ側へ寄ってしまうので、気づいたときに戻すという習慣が効いてくることになります。
作業台からの距離も大切で、離れすぎていると前かがみになり、近すぎると腕が窮屈になってしまいます。ちょうど良い距離は道具や工程によって変わるため、その都度立ち位置を直していくことになります。
台の高さが体に合っていないと、どれだけ姿勢に気をつけていても無理が生まれてしまうものです。台の高さそのものを変えられない場合には、足元に置く台を使って調整する方法も知られています。
床の硬さも一日の疲れ方に関わってくるため、立つ場所に敷物を置いている厨房も少なくありません。長く立つ場所だけでも整えておくと、一日の終わりの時間の感覚がずいぶん変わってくるようです。
靴の選び方もまた大きな要素であり、自分の足に合っていないと余分な力が必要になってしまいます。見た目よりも、長く立っていられるかどうかを基準に選んでいるという声が、現場では多いようです。
同じ場所に立ち続けるのではなく、工程の合間に少しだけ歩くという動きを挟んでいる人もいます。歩くことによって体の使われ方が変わり、固まりかけていた場所がほぐれていくのを感じられます。
重いものを持ち上げるときには、体から離さないように扱うほうが負担が少ないと知られています。急いでいるときほど雑になりやすいため、持ち方を意識できるかどうかが分かれ目になってきます。
立ち位置を決めるときには、次にどこへ動くのかというところまで考えておくと無駄な動きが減ります。作業の流れを頭に置いてから立つようにすると、体の向きも自然と決まってくることになっていきます。
足元の整理も見落とすことのできない要素であり、床が片づいているだけで安心感が変わってきます。安心して動ける場所では体に余分な力が入らず、結果として疲れにくくなるものだといわれています。
動きを減らすほど仕事が速くなるという話
たくさん動いている人ほど仕事が速いように見えるものですが、実際には逆のことが多いようです。動きの少ない人のほうが、同じ時間のなかでより多くの工程を終えていることが珍しくありません。
動きを減らすためには、始める前に道具と材料を手の届く場所へそろえておくことが基本になります。取りに戻る一往復が積み重なっていくと、一日ではずいぶんな時間と体力を使ってしまうことになります。
使う順番に道具を並べておくと、迷って探す時間が消えていき、動きも自然と小さくなっていきます。並べ方を先に決めておくということは、自分の体を守るための工夫でもあると考えられているようです。
腕を大きく振る動きは見た目に勢いがありますが、体力を多く使ううえに精度も下がってしまいます。小さく静かに動かしていくほうが、結果として仕上がりが整いやすいという場面が数多くあります。
同じ工程をまとめて済ませるという組み方も、動きを減らすための考え方としてよく知られています。行ったり来たりを減らすだけでも、一日の終わりに残っている元気の量はずいぶん変わってきます。
作業の順番を一度紙に書き出してみると、無駄な往復がどこにあるのかがはっきりと見えてきます。頭のなかだけで組み立てていると、繰り返してしまっている無駄には案外気づけないものだといえます。
動きを減らすという工夫は、慌てないための準備でもあり、静かな落ち着きを生み出してくれます。落ち着いて動けている日には、仕上がりのほうも自然と整っていることが多いように感じられます。
急がなければならない日ほど、いったん立ち止まって段取りを確かめるほうが早く終わるものです。慌てて先に手を動かしはじめてしまうと、後から戻ってやり直す作業のほうが増えてしまいかねません。
仲間と動きを見せ合ってみると、自分では気づけない無駄な往復に気づかされることが多くあります。外から見てもらうという機会は、自分の動きを整えていくためのとても良いきっかけになってくれます。
動きを減らすほど速くなるという逆さまの理屈は、体を守るための工夫とも静かに重なり合っています。速さと体の楽さが同じ方向を向いているという点にこそ、この仕事の面白さがあるように思われます。
学びの場で整えておきたい体の使い方
製菓の専門学校の実習では、長い時間をずっと立ったままで過ごす日が何度もやってくることになります。この時期に立ち方や動き方を整えておくと、現場に出てからの負担がずいぶん軽くなってくれます。
教える側は、手つきだけでなく立ち姿勢まで見てくれるため、癖を早い段階のうちに直してもらえます。自分では気づけない偏りを指摘してもらえるということは、思っている以上に大きな助けになります。
実習の合間に、自分がどこに力を入れているのかを確かめる時間を取ってみると発見が出てきます。肩に力が入っていたのだと気づくだけでも、その後の立ち方が変わってくることは珍しくありません。
仲間の動きを観察してみると、同じ作業であっても歩数や腕の振り方が違うことに気づかされます。動きの少ない人の段取りを真似してみることが、自分の型を作っていくための近道になってくれます。
道具の置き方まで含めて課題として考える機会があると、動線を意識する習慣が身についていきます。この習慣は現場に出てからも長く働き続けてくれ、忙しい日ほど効いてくることになっていくものです。
無理をしない範囲で試せる時期だからこそ、いろいろな立ち方を実際に試してみることができます。自分に合う形は人によって違っているため、試してから選ぶという過程がどうしても必要になります。
疲れを感じたときにどのように休むのかを覚えておくことも、学びの大切な一部になっていきます。短い時間であっても区切りを入れて体を休めるという習慣が、長く働くための支えになってくれます。
気になることを相談できる相手が近くにいる時期は、思っている以上に恵まれた環境だといえます。遠慮せずに伝えておくようにすると、道具や段取りを一緒に見直してもらえることも多いようです。
記録に立ち方や疲れ方まで書き添えておくと、自分に合う形を探すための手がかりが残っていきます。仕上がりだけでなく、その日をどのように過ごしたのかを残しておく価値は思いのほか大きいものです。
学ぶ期間に整えておいた体の使い方は、卒業した後も長く働き続けてくれる静かな土台になります。技術を磨いていくことと同じくらい、この土台を先に整えておくことが大切だと感じられてなりません。
まとめ
立ち仕事を続けるための体の使い方を見てきましたが、力を入れるほどではなく抜くほど長く立てるという逆さまの理屈が働いています。がんばって踏ん張っている人よりも、静かに立っている人のほうが夕方まで動きが崩れないと現場ではよく語られます。
力を抜くというのはだらしなく立つこととは違い、支える場所を減らして余分な力を使わないという意味に近いものです。力を入れる場面と抜く場面を分けられるようになると、いざ必要になったときにしっかり力を出せる余裕が残ることになります。
足の幅や作業台からの距離、台の高さや靴の選び方といった条件は、一日の終わりの疲れ方を静かに左右していくことになります。片方の足に体重をかけ続けてしまう癖に気づいたときには、かける側をそっと戻すという小さな習慣が効いてきます。
動きが多い人ほど速く見えるものですが、実際には動きの少ない人のほうが同じ時間で多くの工程を終えていることが珍しくありません。始める前に道具と材料をそろえ、使う順番に並べておくというだけで、取りに戻る往復は驚くほど減っていきます。
急がなければならない日ほど、いったん立ち止まって段取りを確かめるほうが結果として早く終わるということも覚えておきたいところです。慌てて先に手を動かしはじめてしまうと、後から戻ってやり直すことになる作業が増えてしまいかねないからです。
学ぶ期間は長い時間を立って過ごすことになるため、立ち方や動き方を整えておくにはこれ以上ない時期だといえるように思われます。手つきだけでなく立ち姿勢まで見てもらえる環境で癖を直しておけると、現場に出てからの負担はずいぶん軽くなります。
気になることがあれば独りで我慢せず、周りの人に相談できる関係を持っておくことが、この仕事を長く続けるための支えになってくれます。速さと体の楽さが同じ方向を向いているという逆さまの理屈こそが、立ち仕事を続けていく人の静かな味方になります。